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  • 執筆者の写真綾里食べる通信

【山下聖人】震災後一年発起した料理人の熱い物語

いい意味でわがままを貫きたい

山下さん(右)とそのお父さんとお母さん。「前来た子も居心地良かったみたいで、昌人さん一家はラテン系だねって言われました(笑)」と笑う。

山下聖人さん、29歳。山下さんは震災後、綾里を離れて東京で5年間料理店で修行生活を送られました。綾里で店を開こうと考え、地元に帰ってきたところを、震災後三陸でボランティア活動をしている佐藤寛志さんから声がかかり、現在「りょうり丸」で料理長として働かれています。


「りょうり丸」は東日本大震災をきっかけに綾里の漁師とダイバー、綾里漁協が連携して立ち上げた、花巻市内にある綾里漁協のアンテナショップです。三陸と他地域をつなぎたい、という思いのもと、恋し浜ホタテなど、綾里の浜から新鮮な海産物を直送し、料理はもちろん、三陸の旬のものも買うことができます。


素材も、サービスも、譲れない。

まだまだ勉強しなきゃ。一生修行ですよ、この仕事は。

「修行時代なんか本当に、胃が痛くなるぐらいに仕事行きたくなかった。『こんなん使えねーよ』とか言われて、夜遅くまで残って包丁の練習したりして。」

東京での厳しい修行時代を振り返って山下さんはこのように振り返ります。ただ、この経験が、今の料理人としての山下さんの土台を作っているようです。

例えば食材へのこだわり。山下さんは自ら足を運び、生産者さんと会って話をして、店で使う食材を決めたいといいます。


「花巻の農家さんで、本当は一般家庭におろす農家だったのに、食べた時にすんげーうまいなって思って気に入っちゃって。それで電話したら飲食店さんは基本的にはお断りしてるんですって言われちゃって。

でも次の月曜の夕方に会わせてもらって。葉っぱの形が揃ってなくても、それが野菜の個性だと思いますし、それを僕は生かすので、どんな野菜が来ても全然大丈夫ですと言った。それでも、基本的に飲食店はやってないんですって言われて。だから料理の熱い話をしたりした。2時間ぐらい口説くのかかったかな。

本当にそこの農家さんを口説きたくて。ちょっとピシッとした格好で行って、結構緊張した(笑)でも食材には本当にとことんこだわりたい。」


東京で学んだのは食材へのこだわりだけではなく、サービスもまたその一つでした。


「東京いた時は外国人のお客さんには本当にいい思いをして帰ってもらいたいなって思ってた。1回ミスったのは韓国人だと思って、ハングルで料理名とかのっけて、どうぞってメニューを紙に書いて出したら、帰り際に、ハンサムですありがとうちなみに私は台湾人ですって。

いやー台湾だったかと思って、でも本当に嬉しかったありがとうって言われたから、そういう気持ちはやっぱり嬉しいな。だから接客は自分だとどうかなということをまず考えてやらないといけない。」

こう話しつつ、彼は次のように気を引き締めます。


「まだまだ勉強しなきゃ。一生修行ですよ、この仕事は。」


震災をきっかけに一歩踏み出す。自分にしかできない貢献を目指す。

やっぱり美味しいものを知ってもらうためにもっと発信していこう

山下さんは、高校卒業後、はじめは地元で美容師として働いていました。


「元々地元いて超悩んでたの、なんでこんな狭い所で悩んでるんだろうって。これが本当に自分のやりたい仕事なのかなって。やりたくない仕事続けてるのって、これって逃げてるのかなって思って。でも辞めるのにも勇気いるしね。」


そんな山下さんを一念発起させたのが、地元を襲った震災でした。


「やっぱり復興て考えた時に、募金とか支援物資とかみんなやるんだけど、そうじゃないいい意味で色々やりたかった。なんかお金とかじゃなくて自分の力で何かやろうって思った時に、地元のもの使って料理したいなって。やっぱり1次産業が元気なくなるとさ、響いてくるわけじゃん2次も3次も。」


恋し浜駅にて。彼は地元の良さに本当に気づくのには時間がかかった、と振り返る

そうして、彼は仕事をやめて東京で学び、地元に帰ってきました。今は将来を見据え、地域の未来のためにはブランド化と若い力が必要だと熱く話してくれました。


「このままじゃまずい、やっぱり美味しいものを知ってもらうためにもっと発信していこうよって、誇り持ってるでしょって。ブランドってやっぱりプライドだと思うんだよ、綾里だって、いい食材いっぱいあるし、もっと自信持っていいと思うんだよ。

もっと若い人の意見を取り入れてやっていかないとだめだと思う。若い人の意見をこっちの人達は何そんなことやったって、って足引っ張るのさ。でももっと若い人が引っ張って行かなきゃいけないんだよね。

昔から自分のやりたいことしかやらなかった。わがままなんだよ。でもいい意味でわがままを貫き通せればなって。」


綾里も料理も本当に大好き。将来的には岩手を飛び出し店を展開させたい。

彼は生粋の料理好き。それが滲み出たおもしろいエピソードを語ってくれました。


「お前もてないからやめたほうがいいよって先輩に言われたんだけど、飲食店行ったら原価計算始めちゃうんですよね(笑)

なんでこれ安いんだろうとか、この刺身一切れ何グラムぐらいかなとか、この食材たぶんなんとか商会からだなぁとか。日本酒一合出てきたら、仕入れこれ何円だったら、とか考えて電卓叩き始めるの。すんごい見てる。俺飲食の変態って言われてる(笑)だから本当に飲食好きな仲間と飲んでると楽しい。」


食材で一番好きなのは、やっぱり魚だそう。


「包丁使ってる時が一番幸せかもね、やっぱ魚さばく時が一番かな。いつも魚と結婚するって言ってるから(笑)そういうこと言ってると、お前変態でしょって言われるけど(笑)。」


「目標とすればりょうり丸の店舗展開とか考えて行きたいんだよね、花巻岩手だけじゃなくて関東とか関西とか海外とか展開していけたらなって思う。

まずは、関西に目を向けたいかな。関西は反応がすごかった、だからその反応の良さがダッと広がるんじゃないかな、だから大阪がターゲットかな~と、そこでいろんな繋がりができればなと思って」


そう語る山下さんは、しっかりと未来へのビジョンを見据え、活き活きとしてらっしゃいました。

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