top of page
検索
  • 執筆者の写真綾里食べる通信

【佐川富廣】生産に全力を注ぐ ~職人の精神~

あなたは漁師について仕事知っていますか?学生ボランティアとして、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大船渡市の越喜来湾に来て、カキ、ホタテ、ワカメの養殖を行っている元漁業理事の佐川富廣(とみひろ)さんを取材した。


朝7時過ぎ、出荷のため、カキを洗ってる富廣さん。

裏切らない海


努力あれば、稼げる

富廣さんは越喜来の漁師の家庭で育ったが、元々はあまり海好きではないため、将来漁師になることを考えていなかった。そのため高校卒業後は、農業関連会社に入った。しかし、サラリーマンとして働いていく中で、海が好きということに気がついた。「漁業は努力を払えば、その分の収穫が得られる。」富廣さんはそう言った。漁業は決して自分の努力に裏がないという思いが強く伝えられた。


海に対する深い感情をもって、富廣さんは改めて漁船に乗った。北海道でイカ釣り、さけます、秋刀魚など網業に携わり、30年間の漁師旅序幕を開けた。


夫は波のなかで闘い、妻は浜で後押し


畑はダメけど、私はここの海が好き

成功の裏には妻の支えは欠かせない。富廣さんも同じである。北海道に漁に行った際、典子さんに出会い、結婚した。その後、5年間網漁船に乗った後、実家帰り、養殖漁業に手を付けた。夫婦二人で助け合い、共に親世代の養殖から規模を拡大して、ホタテ、ワカメ、カキの3種類の養殖を行ってる。

佐川さん夫婦は仲がいい。一緒に写真を撮った際自然と手をつなぐ。

典子さんは船が弱いため、浜での仕事を行い富廣さんを支えている。佐川さんの強い片腕である。


遠くからここに嫁に来て、二人はお互いに支え合いながら、越喜来湾で海とともに幸せな生活を送っている。


努力の先には おいしさがある


漁師は毎回船に乗って海に出るばかりだと思っていたが、実際には細かい仕事も多くある。たとえば、ホタテの養殖において、1つのロープに180個ものホタテが耳づりされている。180個の間間を詰めすぎてしまうと、ホタテの殻が破れてしまったり死滅してしまったりする。一方で間を空けすぎてしまうと、ロープの間の付着物により、貝柱が小さくなってしまう。とても絶妙な作業である。


朝5時過ぎ、泊漁港の様子。

朝日が昇るとともに、カキの出荷作業も始まる。きらきらと光る波に乗り、カキの養殖場に行き、選別作業を行う。大きさにより、出荷できる分は港に運び、大きさが十分でないものは再び海に戻す。それから、港で出荷する分をウォッシャーに通して、綺麗にする。カキをいただくのは一瞬だが、その裏には、長年にわたる絶え間ない努力があるからこそ、おいしさが存在する。


カキをウォッシャーに通して、きれいになった。

人生は毎日よいことではありません。


だれもいなくでも、三陸のうみがもったいない

地球温暖化と震災により、海の環境も大きく変わった。そのため、富廣さんも試行錯誤を繰り返し、毎年海の環境に合わせて、養殖環境を整えた。


例えば、昔はホタテ養殖に必要な種は越喜来湾で取れていたが、海の環境問題により不足してしまい十分な量が取れなくなってしまった。寄生虫が住み着いていることや手間がかかってしまうことから現在では、北海道の種を買わなければならなくなった。


ホタテの種。ホタテは2㎝ぐらい種から、2年間を経て、11センチになると、出荷できる。

それだけではなく、東日本大震災で大きな被害を受けた。越喜来湾の泊漁港の近くにある富廣さんの家は幸いにも庭までしか津波は来なかった。しかし、泊集落では20家以上流されている。漁業で使っていた仕事道具が全て流されただけでなく、養殖を行っている筏も団子状態となっていた。このようなことから、最初からの作業に保証もなく経済的負担が大きいことから漁師を辞めてしまう人も半数いた。また、平均年齢が60歳以上と高齢であることも一つの要因である。そのため、現在、泊漁港は8.9人程の漁師がいるが、後継者は1人しかいない。そんな中、富廣さんは、震災後一度も転職を考えずに、今もなお一生懸命漁師を続けている。サラリーマンとは異なり定年がなく、いつまでも現役で働いている姿は男らしく、海を愛する思いが強く伝わってきた。


漁村の苦境を突き破る


よそから来た人も大歓迎

震災を乗り越え、富廣さんは長年の経験から「頑張ればその分成果が出るから漁師は悪くない」とおっしゃっていた。震災前は近くの大学生を受け入れていたが、現在は近くにあった大学がなくなってしまい、交流がない。高齢化が深刻でありだけでなく、後継者もいなくなり不安が募るばかりである。富廣さんは「よそから来た人も大歓迎」とおっしゃっていた。この富廣さんの海に対する愛をより多くの人に伝えたい。


 

編集者

網谷 夏那/林 婉婷(リンワンティン)


閲覧数:66回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page