top of page
検索
  • 執筆者の写真綾里食べる通信

【千田国広】定置網漁のお父さん  ~歴史を辿る海の待ち人~

更新日:2018年8月27日


千田国広さん

小、中学生のときにお父さんのワカメ、牡蠣、ホタテ、ホヤの養殖を手伝っていたが、漁師になる気はなかった。しかし、婿入りしたことにより、28歳から漁師となり現在は29年目の57歳の大ベテランだ。


今は定置網漁の幹部として、若い世代からも慕われる「定置のリーダー」であり、ワカメ養殖も行なっている。

 

 主人公を失った定置網


定置網漁とは30人前後で船2隻に乗り、魚が回遊しそうな場所に設置してある約400メートルある網の魚が溜まっている部分だけを手繰り寄せて魚を捕る漁法だ。


3、40年前まではだいぼうが網を設置する場所を決めていたが、今では県知事の許可がないと動かせないし、動かすにしても一個半分ずらすだけで億以上の費用がかかってしまう。定置網漁の給料体系は特殊であり一定のライン以上の漁獲量があるとそこから基本給+歩合がもらえる。


しかし、今はマグロの漁獲量の規制が行われており、いくらマグロが取れても逃さなくてはならないため歩合は貰っていないようだ。国広さんはマグロの規制が行われている今が1番つらいと語っていた。

 

 命を預かる責任


漁師の世界では上下関係は厳しいのかと聞いたところ、厳しいわけではないと答えた。だがもちろん厳しい時もあるという。それは船の中だ。海上は命の危険と隣あわせである。だから時として声を荒げて怒鳴ることもある。決してムカつくからとかではなく、命を預かる場所では真剣なだけ、そう語っていた。


漁師の魅力について聞いたところ、人づきあいが苦手でもやっていけるところと答えた。サラリーマンの辞める理由の多くは人間関係であるが、漁師は海から上がれば友達以下の関係でいられる。だからどんな人間でも受け入れられると語っていた。


船の上では真剣に命のやり取りを行うために時とし一喝することもあるが、陸に上がれば上下関係などない。そう熊谷さんと和気あいあいとしながら話してくれた。

 

 若さの秘密はヤングパワー


漁師をやってきて面白いことを聞いたところ、若い世代の成長を見れることと言っていた。


見習い期間の時から育てた若い漁師が、成長してくるにつれ自立していく、それを見ていることが一番楽しいという。もっとも、若い子の行動を見ていることも好きなようで、特に熊谷さんの行動にはいつも笑わされているようだ。



漁師たるもの大量にとりたい


大量に魚が取れるとなにが獲れようが場が盛り上がる。一番印象に残っているエピソードは網を引き上げたら急に海がボコボコッと、温泉のような泡が徐々に出てきた。


その瞬間100トン以上のスケソウダラが目に飛び込んできた。その時はみんなが少年のように騒いだね、と在りし日の思い出を国広さんは語ってくれた。他にもホオジロザメやシロナガスクジラが掛かったなどの興味深い話も語ってくれた。

 

 世代を超えた関係


国広さんは船ではリーダーとしての責任を果たすため、そして若い命を守るために常に気を張り厳しい男でいなければならない。一方岸に上がれば厳しいリーダーとしての顔は海に置いていかれ、年下の漁師と友達のような関係を築ける本来の国広さんになる。国広さんが若い世代からも愛されるのは、公私の区別がしっかりしているからではないだろうか。


つながりが大切、漁師はつながりで成り立っているから


無論、国広さんのたゆまない努力、経験、才能が必要不可欠であると思うが、人との繋がりや縁を大切にするからこそ、定置網漁のリーダーという大役が務まるのかもしれない。これからも国広さんは若い世代とベテラン世代とをつなぐ架け橋となっていくのだろう。


 

編集者

岡村 博貴/竹村 建蔵


←岡村 クマさん 竹村→





閲覧数:40回0件のコメント
bottom of page